協働プロセスの重要な出来事について過去を振り返りながら整理するためのストーリーをベースとした定性的(質的)方法

ストーリーウォールとは?

知識の協働生産プロセスなどの共同で行われるプロセスを、さまざまな関係者がそれぞれどう認識してきたか、過去を顧みるための方法です。ストーリーテリングを用いて個々の見方を集め、過去に対する共通認識を形成します。

まず、白紙のポスターに書かれた単純なタイムライン(水平の時間軸)を書きます。集まった参加者グループは、プロセスの主な段階は何であったか、あるいは共有するストーリーの重要な出来事は何であったかを選び、全員の合意をとった上で、タイムラインに書き込み、何が・誰にとって・なぜ重要か意見交換する方法を見つけます。

なぜ使うべきか?

ストーリーウォールを使うと、異なる見方が比較できるようになり、相互理解が深まります。この手法は、グループのさまざまなメンバーが(少なくとも部分的に)同じひとつのプロセスでも異なる体験をし、異なる要素を重要だと強調することもあるという事実を前提にしています。

いつ使うべきか?

通常、事後(グループのプロセスが終わったあと)に作成されます。

どのように実施するか?

1

共有するプロセス(ストーリーの開始日と終了日)を示す単純なタイムラインを書きます。

2

グループのメンバーは、紙上のタイムラインをもっと細分化した構成にするかどうか全員で話し合います(たとえば、プロジェクトの部分、組織のレベル、プロセスの主な段階に分けて考える)。

3

メンバーは、個々に節目となった出来事や大きな影響を選びます。プロセスの助けになったこと、逆に妨げになったことを挙げる人もいるでしょう。振り返りと意見交換で挙げる意味のあるストーリーの要素を指摘するかもしれません。

4

特定された個々の要素に基づいて、メンバーは協力して自分たちのプロセスを視覚化したストーリーウォールを作成し、グループの共通認識を表現します。異なる見方や体験が共有され、プロセスの要素が話し合われる、重要なステップです。

5

ストーリーウォールをサブグループに分かれて作成する場合、各ストーリーウォールを後でグループ全体に向けて発表することもあります。

6

要素を盛り込んだストーリーの報告に加えて、プロセスを経て学んだことを整理し、理想のストーリーウォールを作成することもできます。

考え方の相違をどう埋めるのか?

一人ひとりが共同プロセスをどう認識し、体験したか互いに説明することによって考え方の相違が埋まり、その結果、相互理解が深まります。

アウトプット・アウトカムは何か?

ストーリーウォールのアウトカムは、グループとそのメンバーの視点から見て特に重要な要素に絞ったストーリーのポスターです。

誰がどんな役割を担うのか?

関係者グループだけでストーリーウォールを作成することもできますが、プロセスの複雑さやグループの雰囲気によっては、ファシリテーター、モデレーター、コーチがいたほうがよいでしょう。

何を準備すべきか?

テーブル1卓、フリップチャート(または模造紙かホワイトボード)をいくつか、マーカーペン(フェルトペン)数色を用意してください。

やらないほうがいい場合

過去の共同プロセスを振り返る必要がない場合、またはオープンに振り返ることができない場合。

もっと知るには?

Smit A 2005. The facilitator’s toolkit. Centre for Business in Society, University of Stellenbosch, South Africa, pp 45.

Pohl C, Wuelser G, Bebi P, Bugmann H, Buttler A, Elkin C, Grêt-Regamey A, Hirschi C, Le Q B, Peringer A, Rigling A, Seidl R, Huber R 2015. How to successfully publish interdisciplinary research: learning from an Ecology and Society Special Feature. Ecology and Society, V20, N2.


【訳注】
✽「アウトプット」:短期的に得られる、活動の結果。
   「アウトカム」:中期的に得られる、活動の成果。


 

★このウェブページの情報は、スイスアカデミー『td-net ツールボックス』の英語(オリジナル)版を翻訳したものです。訳文の質と解釈に関しては監訳者(大西有子)に責任があります。(This profile has been translated into Japanese by Yuko Onishi. Cultural translation and quality assurance is in the responsibility of the translator.)
スイスアカデミー『td-net ツールボックス』 https://naturalsciences.ch/co-producing-knowledge-explained/methods/td-net_toolbox


 

原   題:Storywall. td-net toolbox profile (10)
著   者:Dr. Gabriela Wülser
    Swiss Academies of Sciences • Sustainability Research Initiative
発行所:Swiss Academies of Arts and Sciences (a+)
    Network for Transdisciplinary Research (td-net)
    www.transdisciplinarity.ch • td-net@scnat.ch • @td-net
    House of Academies • Laupenstrasse 7
    P.O. Box 3001 Bern • Switzerland

ストーリーウォール(td-net ツールボックス ツール No.10)
監   訳:大西有子
発行日:2023年12月1日
発行所:総合地球環境学研究所

リーフレットはこちらからダウンロードできます

BACK