参考文献

共創やトランスディシプリナリティに関する参考文献の概要(文献レビュー)とリストです。

文献レビュー

1. サステナビリティ研究における知識協働生産の原則 

Norström, A. V., Cvitanovic, C., Löf, M. F., West, S., Wyborn, C., Balvanera, P., & Campbell, B. M. (2020). Principles for knowledge co-production in sustainability research. Nature sustainability, 1-9.


知識の協働生産(Knowledge Co-production)という言葉はサステナビリティ研究者間で広まっているものの、その概念や実践方法は多岐にわたる。この論文では、質の高い知識の協働生産のための4原則(課題背景・多元的・目標志向・相互作用)を提案し(図1)、これらの詳細および具体的な項目を含む評価方法を提示している。

図1:サステナビリティ研究における知識の協働生産の原則

2. サステナビリティ科学におけるトランスディシプリナリー研究
:実践、原則、課題

Lang, D. J., Wiek, A., Bergmann, M., Stauffacher, M., Martens, P., Moll, P., & Thomas, C. J. (2012). Transdisciplinary research in sustainability science: practice, principles, and challenges. Sustainability science, 7(1), 25-43.


トランスディシプリナリー(TD)研究に関して最もよく引用される文献の1つ。この論文には、TDの文献と実践経験に基づいた、理想的かつ典型的なトランスディシプリナリー研究プロセスの概念モデルとその原則が示されている。

TDの理想的・典型的な研究プロセスは以下の3段階により構成される。
1) 協働による課題のフレーミングと研究チームの形成
2) 協働研究による解決策の考案と普及可能な知識の協働生産
3) 協働生産された知識の統合(再統合)と適用

第一段階では、中核となる研究プロセスの方向性を決め、枠組みを作り、研究に参画するチームを形成する。第二段階では、さまざまな知識を持ち寄り、研究を協働で実施しつつ、課題の解決のため新たな知識を得る。第三段階では、生産された知識を統合し、適用する。

さらにこの論文は、各研究段階の設計原則とその原則の達成に役立つガイディング・クエスチョン(考察を促進する問い)について極めて詳細に述べられている。また、サステナビリティ科学におけるTD研究に共通する課題や、その対処方法に関するレビューがなされている。

図2 理想的なトランスディシプリナリー研究のプロセス

3. 地球変動に関するトランスディシプリナリー研究:持続可能な社会へ向けた知識の協働生産

Mauser, W., Klepper, G., Rice, M., Schmalzbauer, B. S., Hackmann, H., Leemans, R., & Moore, H. (2013). Transdisciplinary global change research: the co-creation of knowledge for sustainability. Current Opinion in Environmental Sustainability, 5(3-4), 420-431.


フューチャー・アース(地球社会の持続可能性の研究に取り組む10年計画の新国際プログラム)の概要と中心的な研究課題をまとめた論文。フューチャー・アースが推進するトランスディシプリナリーな知識の協働生産プロセスでは、協働計画、協働生産、協働普及という3つのステップで段階的に進めていく。学術界とステークホルダーは研究プロセスを通して関わり合うが、関与する度合いは各ステップで異なる。トランスディシプリナリー手法の理論を大規模な研究プログラムで実践するための具体的な手順や活動が示されている。

図3知識協働生産の段階に応じたステークホルダー・研究者の関与の度合い

文献リスト