STORY共創のストーリー

会議室やコミュニティ・スペース、時には青空の下に集まり、地域の課題や未来について語り合う。まちや森、川、海、田んぼなどに足を運び、自然や地域資源を観察し、誰かの言葉に耳を傾ける。立場や職業、考え方や価値観の違う人たちが、持続可能な未来に向けた共通の目標に向かって意見を交わし、それぞれの知識や特技を生かして共に取り組んでいく。このような共創の取り組みに、決まった形はありません。そこに参画するみんなで作っていくものだから。みんなの目指す未来と、目の前の課題をつなぐのは、参加者たちの共創のストーリー。学術論文や報告書では描かれない、共創のストーリーにこそ、つぎのストーリーにつながるアイデアやヒントがあるはず。そう思って私たちは、研究者と住民が一緒に取り組む調査研究や課題解決のために協働で取り組むアクションなど、持続可能な未来に向けた取り組みに参画した研究者や住民の方々に話を聞き、共創のストーリーを書き留めることにしました。その一部を紹介します。

STORY 1田んぼのにぎわいと地域のうるおい

琵琶湖では1970年代、赤潮が発生し社会問題となりました。赤潮を防ぐには、流域全体にわたり生活や農業の排水に含まれるリンや窒素のバランスを保つことが重要です。一方そこで暮らす人々は、少子高齢化や農作物の低価格化などの課題も抱えています。流域の自然環境と住民の生活の両方を守り、良くするためにはどうすべきか。農家の人達と対話を重ね、研究者が着目したのは「田んぼのにぎわい」でした。環境配慮型農業を実践すると、近代農業により減った生きものが田んぼに戻ってきました。生きもののにぎわいは、地域と流域の生態系が健全であることのバロメーターとなりながら、世代を超えた交流をはぐくみ、地域の活性化につながりました。

STORY 2住民参加型の温泉資源モニタリング

日本有数の温泉観光地として知られる大分県別府市では、温泉は資源として、観光・宿泊施設や市営・区営の公衆浴場、病院など、いろいろな目的に利用されています。生活や産業に欠くことのできない温泉を持続的に利用するために、研究者と行政、NPOが共同で市民参加型の温泉一斉調査を企画・実施しました。

STORY 3灌漑用水をめぐる公平な水の分配と管理

灌漑用水が十分に届く農地と届かない農地が存在していたインドネシア南スラウェシ州の地域では、研究者と農家と行政の灌漑担当者が一緒に水量や利用状況を調べ、新たな水路を作りました。また、住民との話し合いを重ね「水分配マニュアル」を作成し、地域の人たちが主体的に公平な管理を行う仕組みを作りました。