リサーチマーケットプレイス
つなげる必要のある(サブ)プロジェクトの間で二者間、または少人数グループ間で双方向交流を図るツール
リサーチマーケットプレイスとは?
リサーチマーケットプレイスは、a)専門分野の経歴が多様な研究チーム内やb)さまざまな社会の当事者と一緒に、自発的な相互作用を図り、アイデアやフィードバックを集中的に集めるための議論の場です。
なぜ使うべきか?
リサーチマーケットプレイスでは、具体的で現実に即した課題を研究チームのほかのメンバーと双方向的に、あるいは少人数グループで話し合うことができます。全体ディスカッションに多数が参加するワークショップ形式の場合、自発的な相互作用が促進されるというより、むしろ妨げられることがあります
いつ使うべきか?
このツールは、異なるプロジェクトもしくはサブプロジェクトの間でつながりを強化する必要があるとき、新しいアイデアを発展させなければならないときに、研究プロセスのどの段階でも適用できます。プロジェクトの計画を開始する時には特に有益で、実際に問題のフレーミングをするときが最適です。
どのように実施するか?
このツールは、少なくとも1時間(2時間が望ましい)のグループワークショップで行い、次のステップで進めます。
1
チーム、プロジェクト、サブプロジェクトごとにポスターを1枚用意し、たとえば、アイデア、プロジェクトのタイトル、短い説明、主要な研究課題を書きます(書くのは紙面の5分の1まで。A4の紙に印刷してから、A2のポスターに貼ってもよい)。ポスターを部屋に掲示します(コルクボードか壁に)。
2
参加者がすべてのポスターを見て回り、ポスターの内容、課題、それぞれの観点を互いに話し合い、すべてのポスターにメモを付け加えます。このメモには、たとえば次のようなことを書きます(指摘のみ、具体的に適用する際には修正が必要)。
・アイディア、タイトル、説明についてのコメント(理解できる、興味深い、など)
・既存の研究課題の表現/内容についてのコメント、見落としている研究課題の付け足し
・ほかのサブプロジェクトとの潜在的なつながりについてのコメント
・サブプロジェクトが取り組む社会問題についてのコメント
・ほかに自発的なアイディア、懸念材料、即座に思い浮かんだことがあれば付け加える
3
リサーチマーケットプレイスの終了に向けて、参加者は自分のグループの研究ポスターに戻り、メモを検討し、必要に応じて自分たちの研究計画にどう取り入れるのか話し合います。
4
全体で、今後の研究にとって重要なアウトカム(成果)と結論を共有します(簡潔に)。
考え方の相違をどう埋めるのか?
考え方の違いがはっきりと埋まるわけではありません。むしろリサーチマーケットプレイスは興味をそそるトピックを中心に自発的に人を集めるものです。また、お互いに意味があり、個人的に関心があることが示されることで、相違を埋めることを助けます。
アウトプット・アウトカムは何か?*
豊富な新しいアイデア、コメント、懸念、思考、反応など。少なくともプロジェクトの早期の段階では、プロジェクトチームのメンバーとの個人的な接点や非公式な協力関係を築くことができます。
誰がどんな役割を担うのか?
プロジェクトチームのすべての研究者と社会の当事者。ファシリテーターがいれば、リサーチマーケットプレイスのルールや手順の紹介と時間管理の助けになりますが必須ではありません。必要であれば、ポスターを見て回り、特にメモを書き込むようにファシリテーターが参加者に呼びかけます。
何を準備すべきか?
参加者を招待し、十分な時間を確保し(1時間で十分と思われるが、もっと長ければ確実に有益)、適切な部屋を準備し(同じ部屋で多数のサブグループに分かれてワークができる広い部屋)、グループファシリテーションに必要な道具をそろえてください(ホワイトボード、フリップチャート、人数分のペンなど)。
やらないほうがいい場合は?
このツールは、どのサブプロジェクトも研究業務に多忙をきわめていて、新しいアイデアを吸収できない時には使うべきではありません。
もっと知るには?
ウェブサイト:www.openspaceworld.com/users_guide等
【訳注】
*「アウトプット」は、短期的に得られる、活動の結果(成果物等)。「アウトカム」は、中期的に得られる、活動の効果・成果。
このリーフレットは、td-netによる「知の協働生産のためのツール集」を翻訳したものです。最新の情報については、td-netのウェブサイトをご覧ください。
(https://naturalsciences.ch/co-producing-knowledge-explained/methods/td-net_toolbox)Stauffacher, M. 2020. Research marketplace. td-net toolbox profile (8). Swiss Academies of Arts and Sciences: td-net toolbox for co-producing knowledge. (ストファシャー, M. 大西有子監訳 2022 『リサーチマーケットプレイス:td-netツールボックス ツール No.8』 総合地球環境学研究所)