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ストーリーウォール
共同プロセスの重要な出来事について過去を振り返って整理するためのストーリーを基本にした定性的(質的)方法
ストーリーウォールとは?
ストーリーウォールは、知識の共創プロセスといった共同プロセスをさまざまなアクター(行為者)がそれぞれどう認識してきたか、過去を振り返って見つめるための方法です。ストーリーテリングを用いて個々の見方を集め、過去に対する共通認識を形成していきます。 出発点は白紙のポスターに書かれた単純なタイムライン(水平の時間軸)です。集まった参加者グループは、プロセスの主な段階は何であったか、あるいは共有するストーリーの重要な出来事は何であったかを選び出し、一同の合意をまとめ、それらをタイムラインに書き込み、何が・誰にとって・なぜ重要か意見交換する方法を見つけます。
なぜ使うのか?
ストーリーウォールによって異なる見方がが比較できるようになり、相互理解が深まります。ストーリーウォールは、グループのさまざまなメンバーが―少なくとも部分的には―同じひとつのプロセスでも異なる体験をし、異なる要素を重要だと強調することもあるという事実を前提にしています。
いつ使うべきか?
ストーリーウォールは通常事後、すなわち集団プロセスの最後に作成されます。
どう使うのか?
専門家グループを編成した後、デルファイ法は概ね次のステップで進めます。
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出発点として、共有するプロセス、すなわちストーリーの開始日と終了日を示す単純なタイムラインを書きます。
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グループのメンバーは、紙上のタイムラインをもっと細分化した構成にするかどうか全員で話し合います(たとえば、プロジェクトの部分、組織のレベル、プロセスの主な段階に分けて考える)。
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アクターであるメンバーは個々に節目となった出来事や大きな影響を選びます。プロセスの助けになったこと、逆に妨げになったことを挙げる人もいるでしょう。ほかにも振り返りと意見交換で挙げる意味のあるストーリーの要素が指摘されるかもしれません。
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特定された個々の要素に基づいて、メンバーは協力して自分たちのプロセスを視覚化したストーリーウォールを作成し、グループの共通認識を表現します。異なる見方や体験が共有され、プロセスの要素が話し合われるので、ここが主要なステップです。
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ストーリーウォールをサブグループに分かれて作成する場合、各ストーリーウォールを後でグループ全体に向けて発表することもあります。
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要素を盛り込んだストーリーの報告に加えて、大切な教訓を選び、それを踏まえて理想のストーリーウォールを作成することもできます。
考え方の相違をどう埋めるのか?
一人ひとりが共同プロセスをどう認識し、体験したか互いに説明することによって考え方の相違が埋まり、その結果、相互理解が深まります。
結果・成果は何か?
ストーリーウォールのアウトカム(成果)は、グループとそのメンバーの視点から見て特に重要な要素に絞ったストーリーのポスターです。
誰がどんな役割を担うのか?
アクターのグループが集まって独力でストーリーウォールを作成することもできますが、プロセスの複雑さやグループの雰囲気によっては、ファシリテーター、モデレーター、コーチがいたほうがよいでしょう。
必要な準備は?
テーブル1卓、フリップチャート(または模造紙かホワイトボード)をいくつか、マーカーペン(フェルトペン)数色を用意してください。
やらないほうがいい場合
過去の共同プロセスを振り返る必要がない場合、オープンに振り返る下地がない場合。
もっと知るには?
Smit A 2005. The facilitator’s toolkit. Centre for Business in Society, University of Stellen- bosch, South Africa, pp 45.
Pohl C, Wuelser G, Bebi P, Bugmann H, Buttler A, Elkin C, Grít-Regamey A, Hirschi C,
Le Q B, Peringer A, Rigling A, Seidl R, Huber R 2015. How to successfully publish interdis- ciplinary research: learning from an Ecology and Society Special Feature. Ecology and Society, V20, N2.
このリーフレットは、td-netによる「知の協働生産のためのツール集」を翻訳したものです。最新の情報については、td-netのウェブサイトをご覧ください。
(https://naturalsciences.ch/co-producing-knowledge-explained/methods/td-net_toolbox)ヴュルサー, G. 2021、ストーリーウォール、大西有子(監訳)、TD研究のツール集、総合地球環境学研究所
Wülser G 2020. Storywall. td-net toolbox profile (10). Swiss Academies of Arts and Sciences: td-net toolbox for co-producing knowledge. www.transdisciplinarity.ch/toolbox. doi.org/10.5281/zenodo.3717396