ベン図ツール
参加者の経歴、専門知識、共通テーマを中心としてグループ編成をするための図
ベン図ツールとは?
ベン図ツールは、参加者それぞれの専門性(経歴、関心、専門分野など)と関心のある共通テーマを図式化して明確にするものです。ベン図は重なり合う3つ以上の円で構成され、各円はテーマを表します。参加者は、各自の専門知識と関心に基づいて、1つの円もしくは円が重なり合う領域に割り当てられます。多様な人々が集まったグループで本ツールを使うと、次の点で役立ちます。
1)参加者の専門知識の多様性と分布がわかる。
2)共通するテーマを中心に参加者をグループ分けできる。
なぜ使うべきか?
知識の共創では、経歴、関心、専門知識が個々に異なる多様な参加者が集まります。ベン図を作成すると、参加者が共通のテーマに対する互いの専門知識や関心を意識できるようになります。その結果、参加者が自発的にサブグループに分かれたり、モデレーターが透明性を持ってグループを編成できたりします。
いつ使うべきか?
ベン図ツールを共同プロジェクトの初回のワークショップで使うと、互いを知り、知識共創のためのテーマを決めるのに役立ちます。
どのように実施するか?
1
モデレーターが参加者またはプロジェクトリーダーに相談して、どんなテーマをベン図にまとめるか明確にします(たとえば、食と健康と環境)。
2
モデレーターがベン図を用意します。
3
参加者がグループに分かれる前に、たとえば、ミーティングで、あるいはワークショップ開始時に、まずモデレーターが参加者にベン図を説明します。ベン図は大判の紙に印刷するか、手書きします。スクリーンに投影する方法もあります。どの手段を使うか決めるときは、どうすれば参加者のインプット(意見や情報)をベン図にまとめることができるか(ミーティングやワークショップで)に留意することが大切です。
4
モデレーターのサポートを受けながら、参加者が一人ずつ自分を表す画像か付箋をベン図に貼っていきます。そして一人ずつ手短に自分の経歴を紹介し、ベン図のどの領域になぜ関心があるのか説明します。
5
全員がベン図に配置されたら、モデレーターは、ベン図を見て知識共創の共有トピックとグループについての提案を参加者に求めます。チームの多様性(ジェンダー、人種、年齢、専門分野などに関して)が要求されるとか、ほかにチームの構成基準がある場合、それに応じて参加者に変更案を求めます。このグループ分けの変更は画像や付箋を移動させるか、ベン図に直接印を付けて行います。

考え方の相違をどう埋めるのか?
ベン図ツールでは、モデレーターと参加者が考え方の違いをはっきり認識しなければなりません。その違いは、参加者がテーマの「全景」に自分を置き、どんな専門知識に貢献できるか説明するときに現れます。物理的に重複と共通点が視覚化されるベン図は、違いよりもさらにはっきりと参加者が共有している関心を見つけようとするツールです。
アウトプット・アウトカムは何か?*
第一のアウトカム(成果)は、一連の共通テーマが決まり、知識共創に向けてテーマをさらに整理するための関心ある参加者グループが編成されることです。第二のアウトカムは、部屋に集まった人々の異なる経歴、関心、専門知識をより意識するようになることです。違いを比較し、重なり合う領域があることを確認できます。
誰がどんな役割を担うのか?
プロセスをサポートするモデレーターがいると役に立ちます。ただし、ベン図の領域への振り 分けは参加者自身が中心となって行います。
何を準備すべきか?
付箋、大判の紙に印刷したベン図、マーカーペン。あるはノートPCとプロジェクター。
やらないほうがいい場合
ベン図ツールは中規模グループ(10~30人)に適しており、小人数や大人数のグループには適していません。
もっと知るには?
現在のところ(訳注:TD手法としての)ベン図ツールに関する出版物などはない。
【訳注】
*「アウトプット」は、短期的に得られる、活動の結果(成果物等)。「アウトカム」は、中期的に得られる、活動の効果・成果。
このリーフレットは、td-netによる「知の協働生産のためのツール集」を翻訳したものです。最新の情報については、td-netのウェブサイトをご覧ください。
(https://naturalsciences.ch/co-producing-knowledge-explained/methods/td-net_toolbox)Pearce, B. 2020. Venn diagram tool. td-net toolbox profile (6). Swiss Academies of Arts and Sciences: tdnet toolbox for co-producing knowledge. (ピアス, B. 大西有子監訳 2022 『ベン図ツール:td-netツールボックスツール No.6』 総合地球環境学研究所)