用語

共創に関連する専門用語の解説です。

あ行 ウィキッドプロブレム
か行 協働企画
コ・デザイン
コ・プロダクション
協働生産
協働発信
た行 トランスディシプリナリティ
トランスディシプリナリー研究
超学際
は行 ポスト・ノーマルサイエンス
ま行 モード1/モード2の知識生産
や行 厄介な問題

協働企画/コ・デザイン(Co-design)

TD研究プロセスの第一段階。
社会的な課題に対して、科学者及びステークホルダーが社会と科学界双方に有効な成果を出すため、共同でプロジェクトの計画を作り出すこと。

協働生産/コ・プロダクション(Co-production)

TD研究プロセスの第二段階。
科学者及びステークホルダーが連携しつつ研究を進め、新たな知識・知見を生み出すこと。

協働発信(Co-dissemination)

TD研究プロセスの第三段階として、Mauser等(2013)が提案。協働生産により生成された知識(成果)を、社会で活用できる情報として発信すること。協働普及と訳されることもある。

トランスディシプリナリティ/超学際
(Transdisciplinarity / TDR)

「discipline」(分野・学問)を「trans」(超える)という語源を持ち、複数の人達が各々の専門分野の垣根を越えて協働する手法やその理論のことを指す。異なる知識を融合して新しい理論・手法・施策を創り出すこと、そして、社会問題の解決のためにさまざまなステークホルダーが協働することを特徴とする。

トランスディシプリナリー研究/TD研究/超学際研究
(Transdsciplinary Research / TDR)

課題解決に必要なあらゆる学術分野の専門的な技術・知識を統合しつつ、科学者以外のステークホルダーと協働で企画・実施する研究。従来の学術分野の範囲を超え、社会のさまざまなセクターにおける実務から得られた実務知や、住民の生活知や経験知を統合し、共通の目標に向けて共に解決策を講じることを目指す。

ポスト・ノーマルサイエンス(Post normal science)

不確実な状況下で、その価値が定まっておらず、利害が大きく、かつ意思決定を急ぐ必要がある課題に対して行われる科学の領域。現代科学の分類の1つとして、フントウィックスとラベッツにより1992年に提唱された。ポスト・ノーマルサイエンスの領域では議論の余地のない単純な答えを科学的知識から示すことができない。社会のステークホルダー(政策担当者、実務家、市民等)の多様な利害関係を踏まえて価値判断をするために、研究者とステークホルダーとが協働で意思決定しなければならない。価値のある、また望ましい未来に関する議論を通じて、正当性のある多元的な観点を対話に組み入れ、相互学習を伴う意思決定が重要である。(Wyborg, et al. 2019)

モード1/モード2の知識生産(Mode1/Mode2 knowledge production)

モード1の知識生産は、研究者がアカデミックな視点から課題を設定し、学術的な探求を行う知識生産の方法である。これに対して、モード2の知識生産では、研究者と社会のステークホルダーが連携し、社会の課題を解決するために必要な知見を生み出し、社会で実践する方法である。

*広範な分野と社会の知識を融合した知識、超学際的知識
(Gibbons et al. 1994, Coghlan & Brydon-Miller, 2014より改定)

モード1、モード2の知識生産を提唱したギボンズらによると、モード2の知識生産は「社会的頑健性のある知識」の適用と提供という文脈で生じる双方向型の知識生産、と定義されている。(Gibbons, 1994)

厄介な問題/ウィキッドプロブレム(Wicked problem)

「厄介な問題」は、複雑、不明瞭、不確実な問題のことで、ステークホルダーが多数存在し、そこに明確な解決策はない。具体的には以下の特徴がある。

1)価値観の異なる多くのステークホルダーが存在する
2)問題の根源や性質が複雑で入り組んでいる
3)問題の解明に取り組む間にも問題が変化し、予測ができない
4)前例のない課題である
5)問題に対する「正しい解」が存在しない

(Rittel and Webber 1973, Camillus 2008 より改変)

「厄介な問題」が最初に定義されたのは、ホルスト・リッテルとメルヴィン・ウェッバーが1973年に発表した論文*であり、それによると以下の10の特徴のうち、複数またはすべての特徴を持つとされている。

  • 「厄介な問題」には明確な定式がない。
  • 終わりが決まっていない――ある策が最終的な解決になるかどうかを知ることができず、解決策の探求が常に続く。
  • 解決策が「正しいか間違っているか」ではなく、「良いか悪いか」で判断される。
  • 解決策を即座に、または完全に検証することができない。
  • 試行錯誤を経て学ぶ機会がないため、解決策はすべて「一回限り」の実施となる――毎回の実施が重要である。
  • 解決のための選択肢を列挙することができない。
  • 1つひとつの「厄介な問題」は、本質的に異なる。
  • 「厄介な問題」は、それぞれ別の問題とつながっている。
  • 「厄介な問題」には、多様な解釈が存在する。どのような解釈をするかにより解決方法が異なる。
  • 「厄介な問題」に主導的に関わる人には、行動の結果に対する責任がある。

*Rittel, Horst W. J.; Webber, Melvin M. (1973). “Dilemmas in a General Theory of Planning”. Policy Sciences. 4 (2): 155–169. doi:10.1007/bf01405730.