一般的に「共創」は、異なる立場の人たちが集まり、話し合うことから始まります。しかし、立場や経験が異なる人たちが集まるとき、すべての人が忌憚なく意見交換できるかというと、そうでないことも多々あります。特に、社会的に弱い立場の人たち(社会的弱者)にとって、共創の場に来て、自分たちより立場の強い人たちと平等に議論することは簡単ではありません。
そのような社会的弱者と呼ばれる人たちと一緒にTD研究を進めるために、新しい方法を提案する3本の論文が発表されました。
論文では、開発途上国で貧困状態にある人たちが、自然資源を持続可能な形で管理しつつ、生活の質を向上させるための手法や仕組みに焦点を当て、地域に長期的に関わる研究者と住民たちとが対話と熟議を繰り返し、地域の中から、課題を解決する糸口となる方法(イノベーション)を生み出す方法を提案しています。
また、小さな工夫の積み重なりが社会全体の変化につながる可能性に着目して、イノベーションの創発から社会と生態系の変化までの因果関係のネットワークを描くことで、本質的な社会の転換へとつながる道すじを明らかにしています。ここでは、小さな変化がシステム全体の本質的転換をもたらしうる部分を指す、「レバレッジ・ポイント」という概念の新しい定義を提案し、それに基づいた分析が行われています。
特に、開発途上国におけるTD研究や、貧困問題、自然資源管理を対象としたトランスディシプリナリー手法に興味のある方におすすめです。
詳しくは以下のリンクより、論文をお読みください。
「途上国の地域社会における内発的イノベーション1~3」Sustainability, 2022, 14 (18-19)
Autonomous Innovations in the Rural Communities of Developing Countries I—A Narrative Analysis of Innovations and Synergies for Integrated Natural Resource Management (H. Tajima, T. Sato, S. Takemura, J. Hori, M. Makino, D. A. Rampisela, M. Shimagami , J. B.Matewere, B. Ndawala)
Autonomous Innovations in Rural Communities of Developing Countries II—Causal Network and Leverage Point Analyses of Transformations (S.Takemura, H.Tajima, J.Hori, ,M.Makino, J.B.Matewere, D.A. Rampisela, T.Sato)
Autonomous Innovations in Rural Communities in Developing Countries III-Leverage Points of Innovations and Enablers of Social-Ecological Transformation (H.Tajima, S.Takemura, J.Hori, M. Makino, T. Sato)
研究プロジェクトに関する詳細は、以下のリンクからご覧ください。
貧困条件下の自然資源管理のための社会的弱者との協働によるトランスディシプリナリー研究(TD-VULSプロジェクト)
プロジェクトウェブサイト:http://td-vuls.org/
プロジェクト紹介:https://www.jst.go.jp/ristex/variety/fe/29sato.html
動画: